SSブログ

嫌いな性格づけしたキャラを描くのは難しい?(別冊図書館戦争2を読んで)ネタバレ注意 [本・テレビ番組・ドラマ・映画・マンガ・アニメ]

7月3日追記。
6月29日追記。
ふと思った。(とはいっても、私は読書家というほどではないので、何となくそう思ったということで)

男性作家は、主要キャラとして「容姿が劣る女性」という設定でお話を作らない気がする。端役、雑魚キャラとしてなら登場するけれど。
つまりそういう女性キャラを最初から出さない。そんなキャラは主要キャラにするほど興味持てないし、考えたくもないのかもしれない^^;(ちなみに男性キャラならありうる。主役級もあったりする)
主役級の女性は美人。悪役も美人だ。美人しか出さない^^;

で、女性作家も美人好きだけど、たまに主要キャラに容姿が劣る女性を出したりしている。(もち、ケースとしては少ないけど)
で「容姿がさえないキャラ・ブスキャラ」を、なぜか性格を強気にしたり、もしくは共感を得られない嫌われるような行為をさせる。性格も全く魅力なし。
そこに共通するのは遠慮のない蔑視だ。遠慮なく笑いものにしたり、もしくは救いなく不幸に陥れ、誰からも愛されない話にしたりすることがけっこうある? 
(でも今のところ「恋愛小説」(椰月美智子)か「図書館戦争別冊2」(有川浩)しか知らないのだが)

容姿の冴えない女性キャラを全くいいとこなしで、読者に100パーセント共感できないように描写している・・・女性作家の方もけっこうブスに厳しいのかもしれない^^;

ただ朝比奈あすか氏の「自画像」は良かった。こちらも容姿が冴えない女キャラが主役級で2人ほど登場するが、きちんと劣等感や、周囲から見下されいじめられる描写があり、心理描写も丁寧。なので共感できる部分もある。少なくとも、全くいいところなし、という描き方はしていない。

やっぱり、キャラをいかに丁寧に描くか、だよなあ。
逆に、丁寧に描く気がどうしても起きなければ、最初から登場させないほうがいいのかも。
というか作者が嫌いなタイプの人間を物語上に登場させると、そういう描き方(いいところ全くなし、100パーセント魅力なし)になるのかもしれない。

・・・
6月26日
遅まきながら、図書館戦争シリーズ(有川浩)を読んだ。
ああ、こういう話だったのね。このノリ、キャラでひっぱる話、漫画みたいな物語はけっこう好きなので、おもしろく読んだ。
それでも、「別冊2」だけ、ひっかかった点があったので、感想を記してみようと思う。

以下ネタバレ注意。

で、その「ひっかかり」は、椰月美智子氏の「恋愛小説」と同じだ。
図書館戦争別冊2に登場する『水島さん』が、『ジェロニモさん』(「恋愛小説」に出てくる気持ち悪い描写をされたオタク女子)とリンクした。
まさに『恋愛小説』読んでジェロニモさんがかわいそうになってしまったのと同じ。水島さんがかわいそうになってしまった。

物語上では、水島さんとジェロニモさんも、救いなく、全く魅力もなく、もちろん主人公らと和解することなく、気持ち悪く、読者からも共感を得られない描き方をされている。
作者の「キャラへの愛」が全く感じられない。悪キャラにしても、いちおう物語において主要人物なのにだ。(ジェロニモさんにおいては、悪キャラというより、ただ気持ち悪くウザいだけの笑いものキャラ)

水島さんやジェロニモさんとリンクした性質を持つワシは、やっぱり嫌な気分になった。

水島さんは真面目だけが取柄で目立たない地味キャラで「すみません」が口癖な卑屈なところがあるつまらないキャラ。当然、魅力もなく、皆から引かれている、友だちが少ない。

ジェロニモさんは、我が道を行く空気を読まないオタク女子。デブスでおしゃれに疎く、センスが悪い。で、皆から陰で軽く見られている=馬鹿にされている。
(神の視点で、皆から親しまれていると説明があるが、その後、ジェロニモさんは気安い、それはジェロニモさんに嫌われてもいい、彼女は皆にとってどうでもいい人間だからだというような記述がある)

ああ、そういえば水島さんも空気読めない系、結果、相手を本当の意味で気遣えない。
やはり空気や相手の気持ちを読めない者はダメなのか・・・

そう、どちらも、現在の「いじめられっこ」の性質(人から疎まれる性質)を持つ。

が、なぜか強気な時は強気(ジェロニモに限ってはずっと強気)。
なので作者もその強気となった疎まれキャラを物語上で悪しざまな描写をする。

それが、私には,いじめているように見えた。作者は物語の世界においては神さまだからだ。で、キャラを生んだ親ともいえる。

神様であり親でもある作者は、その疎まれキャラに一切の幸せを与えず、読者からもひとつも共感を得られない描き方をし、みじめ、痛いキャラで終わる。いいところがひとつもなく描かれる。物語上、主要キャラなのにだ。

この「図書館戦争別冊2」では、仕事能力ともいまひとつで地味で卑屈な人間、友だちも少なくコミュ障といっていいかもしれない水島さんは柴崎を陥れる犯罪を犯す。全く「いいところなし」のキャラ。

一方、柴崎は手塚と結ばれ、幸せを手に入れ、皆から祝福される。

なお、ここで主人公として登場する手塚と柴崎は、容姿も頭も良く、仕事もできて、皆からも注目の的で、異性から憧れられモテまくるキャラだ。
つまり完全な勝ち組キャラ。

そんな勝ち組キャラが、水島さんに投げつける言葉が、いじめっ子のような感じ。
卑屈なのでイラつくのは分かるけど。

さすがにこれはないな、と思ったのが、手塚(男)の水島さんに対する言葉。
「あんた、気持ち悪い」

男が、女に言う言葉としては、かなりキツイ。(しかも水島さんは手塚が好き。ちなみにこの時、手塚は水島さんが犯人だと知らない)
もち、作者は、そうされるようなキャラに水島さんを仕立てていったわけだけど。

『恋愛小説』のジェロニモさん(女)も、主人公から散々気持ち悪がられたっけ。

いじめられっこ性質を持つ者にとっては、おそらくキツイ話だと思う。どうしたって水島さんに己をリンクさせてしまう部分があるだろうから。

そして水島さんは全くいいことなし、嫌われキャラでみじめに終わる。勝ち組キャラの手塚と柴崎がくっつくための、雑な描写しかされてない単なる「当て馬キャラ」「捨てキャラ」だ。

特別な能力もなく、地味でおとなしく、コミュ障害で友達少ない、真面目だけが取柄で仕事ができず(要領が悪いのだろう)、皆から引かれている、そしてそんな性質を持つにいたる過程は描かれていないので、誰からも共感得られず、単なる卑怯な犯罪者で終わる、いいところがひとつもなしで、反省もしない、従って和解もない、読者からも「いい気味だ」と思われる嫌われキャラ。
悪役の魅力もなし。

そう、悪役は悪役なりの魅力がある物語もたくさんある。
性格はともかく頭がいいとか、特殊な能力があるとか、容姿はいいとか、部下を引っ張りリーダーシップが取れているとか、悪を行うに至る理由が愛する誰かのためとか、あるいは自分が犯した罪を反省する、あるいはそれに至る不幸な生い立ちがあるなど、わずかでも読者の共感を得られるよう、作者は普通、そういう悪役を作る。主要キャラなのだから。

魅力がひとつもない負けキャラで、読者からの共感が全く得られない無残な結末を迎える悪役がいたとしたら、その性格や性質をもつ人間が、おそらく作者は嫌いなのだ。だから悪しざまな描写をする。

図書館戦争の水島さんでいえば、容姿も地味でおとなしく、頭がさほどよくなく、卑屈なのでイラつかせる・・・作者の有川浩氏はそんな女性が大嫌いなのだろう、と推測してしまった^^;
だから誰からも共感されない全くいいところなしという雑な描写になるのかも。その性格が形成されるにいたった理由も描写しない。単なる負け組要素満載なちんけな嫌われキャラ。

水島さんは、神であり親でもある作者から、そういう扱いを受けたキャラだ。

それがよく表れた水島さんについて最後に書かれた一文がある。

「図書館戦争別冊2」より転載
【地味で目立たない水島のスキャンダルに寮は一時期湧き上がったが、本人が懲戒免職を受けているうえ、地味で目立たない分だけ出てくる話題も乏しく、すぐに鎮静化した】

転載終わり。
【地味で目立たない】を2回繰り返し、水島さんがいかに「ちんけな悪役」だったかが表されている。

なので水島さんがかわいそうに思えてしまった。
地味で目立たないって、そんなに見下されることかしら。

というわけで、私からすれば、作者という神から愛され世間でいう勝ち組要素を持つ手塚と柴崎の強者っぷりに、いじめっ子に見えてしまった。(もちろん彼らは物語上では被害者なのだけど)

結局、勝ち組は幸せになり――そういえば、なぜか皆(郁、堂上、柴崎、手塚、小牧、毬江)容姿はいいという設定だ。それだけに水島さんの目立たない地味容姿という設定がかわいそうにも思う――負け組は勝ち組にちょっかいを出して不幸になる、そんな話にも思えてきた。
(水島さんは手塚が好きで、柴崎に対して歪んだ思いを抱き、あのような犯罪を行ってしまった)

一番印象に残った場面は・・・柴崎が、水島さんをうざがる描写にドキッとした。学生時代、地味で鈍くさくトロかった私も、きらびやかな女子やしっかり女子から、ああ思われていたんだろうなと痛い気分^^;


・・・・・
アマゾンより、私と同じ感想を抱いた人のレビューを一部抜粋転載。

【犯人の描写も最終段階になるまで、ただ大人しく地味としか伝わってこず、周りが思い切り嫌悪感で迎えているのが不自然で、逆に柴崎が嫌ないじめっ子みたいな印象に。
もうちょっと書き込んで欲しかったです。】

【これから購入する方で私のように 地味で大人しく、依存心が強くて人間関係築くのが苦手で内向的な性格に悩んでいる方へ
絶対購入しない方がいい!後悔するから!本当に!
これより自己啓発本買った方が有意義な時間を過ごせるよ!】

【手塚と柴崎の話を読んでいるうちにだんだんと嫌な気持ちになりました。
この小説に出てくるようなスーパーな人達はこの世の中にはなかなか存在しません。
柴崎と水島の同室開始以降の、柴崎の「水島が苦手」という考え方や態度についての描写。
話が進んでからの手塚の水島に対する言葉等々。
多分自分が柴崎と同室になったら、水島と同じ態度になってしまうかもしれないと思いました。

柴崎の持っている揺るぎない自信は、時として周囲を傷つけると柴崎自身わかっていながら、どうしてあのような態度になってしまうのだろう、読んでいるうちに大好きだった郁でさえ鼻につくようになってしまいました。
もちろん水島は歪んでいて、彼女の犯罪は許されないものです。絶対にやってはいけないことです。
私は犯罪は犯しません。
でも私の中に今までの巻では感じなかった、郁や柴崎に対する僻みと水島への同情のような気持ちが芽生えていました。

郁と堂上、小牧と毬江等々みんながみんな幸せで素敵で。
柴崎と手塚を幸せにするために、ここまでの状況が必要だったのでしょうか。
最後の最後に嫌な気持ちになり――】

【こんな事件を起こさなくても、あんないいところが一つも見つからない当て馬を出さなくても、ハッピーエンドに出来たんじゃないかと思ってしまいました。最後なんだから読後感の良いお話が読みたかった】


転載終わり。

そう、内向的で自分に自信が持てず人間関係の悩んでいる人にとってはキツイ話。全くいいところなしの水島さんとリンクしてしまうからだ。当然、物語中、そんな水島さんと心を通わせるキャラもいない。皆からひたすら嫌われ、軽蔑されるだけのキャラ。

内向的な人間にとっては後味の悪い、嫌な気持ちになるだろう。学生時代の私が読んだら、おそらく傷ついたかもしれん^^;
いや、だって、ほんと水島さんにそっくりなんだもの。卑屈で「すみません」も口癖だった。
もち、あんな大それた犯罪は犯さないし、そもそも勝ち組に入る手塚のような人間に近づこうとも思わない、あこがれで遠くで見るのが関の山だ。で柴崎のような美人で頭がいい女性には恐れ多くて、壁を作るだろう。ま、疎まれていることは自覚しつつ。人と必要以上に距離をとるタイプだから。んで、いじめられないように、びくびくして過ごしている。なので、こういう人間が勝ち組キャラに対し強気にはならないと思うんだけど。

ちなみに、今はぜんぜん。自分は我が道行っているんで、人のことはあまり気にしてない。心穏やかに暮らしておる。

とにかく、おとなしくて地味で、誰からも相手にされず、真面目なだけで要領が悪いため仕事ができず、人間関係築くのが下手で、そのため卑屈になった人間が、団体の中で見下され、いじめられませんように。


関連記事
http://kayashi.blog.so-net.ne.jp/2015-11-21
http://kayashi.blog.so-net.ne.jp/2015-11-24
椰月美智子氏の『恋愛小説」で悪しざまに描かれたオタク女子のジェロニモさんについて。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
余談。
本編と別冊1までとても楽しく読めた「図書館戦争」だが・・・

※別冊2でひっかかったのは、あくまでも「全くいいとこなしの嫌われキャラ」の水島さんに一つの救いもなく、そんな水島さん(地味、人をイライラさせる、友だち少ない、すぐに謝る、同期なのに「丁寧語」を使う、真面目だけが取り柄、これといった能力がない)が自分にリンクしたからだろう。ちなみに私は社会人になってからは同い年であろうと基本「丁寧語」しか話さない。年下にもだ。
で、水島さんにイラつく柴崎さんやほかの寮生を見て、ああトロくて鈍かった自分も皆からこういう風に思われていたのだな、と痛い気分になるためだ^^;

さてさて、こんな記事を見つけた。司書の方の感想ということで、だいぶ前に話題になっていたらしい。
http://blog.liverarian.com/index.php?itemid=59095

一部転載
【真面目に努力している図書館職員をおちょくるような小説は,今回だけにしてほしいですね。 】

これはキツイ。これにはちょっと私も反論したい。
別に図書館職員をおちょくってはいないだろう。
おちょくる=馬鹿にする、からかう、ひやかす。
つまり「見下している」要素があるってことだけど、図書館職員を見下している??? からかっている? ひやかしている?


nice!(0)  トラックバック(0) 

nice! 0

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。