SSブログ

「絶歌」と「天国からのラブレター」(光市母子殺害事件の本村洋氏の本)の共通点 [本・テレビ番組・ドラマ・映画・マンガ・アニメ]

「絶歌」が話題になっている。

被害者遺族側にしてみれば、事前に相談もなく出版されたことで、怒り、傷つき、出版差し止めを請求しているが、出版社は応じず、これからも増刷して、売っていくようだ。
※初版10万部。桁違いだな。

「日の丸街宣女子」関連記事で、「言論の自由」や「言論弾圧」について述べてきたように、犯罪者であれ出版する権利はあると思う。

ただし・・・このことで「サカキバラ事件」のことが話題になり、「少年A」の実名や写真がネットに出回り、著者である「元少年A」はそれなりの制裁を受けることになるかもしれない。

ここで作家の小池一夫氏の言葉を紹介。

転載。
・・・・・・・
小池一夫 ‏@koikekazuo · 6月13日
元少年Aの性格等が更生されていないなと思うのは、「センセーショナルなことを起こして世間の注目を浴びたい」という性質が改善されていないところだ。手記出版でまた世間の注目を浴びたいという性質は、校門の上に首を乗せたり、犯行声明文を新聞社に何度も送ったりした頃と何ら変わっていない。


「絶歌」は、僕は読まない。内容以前に、被害者家族に本の執筆を伝えていなかったのは、先に伝えると本の出版が出来なくなる可能性が高くなることを知っていたわけで、「悪いと分かっていても自分の欲望を優先させ実行する」という、元少年の性根は変わっていないと判断した。(小池一夫)
・・・・・・・
転載終わり。


私も読まない。アマゾンのレビューを見れば、内容はなんとなく分かる。たぶん、読んだところで、少年Aの心理や感覚は理解できないだろう。

それよりも当時の家庭環境の詳細を知りたいが、そういった個人特定できてしまうものは書かれていないのだろう。

「人を殺してみたい」という気持ち=脳を持つ人は、ごくごく少数だけど存在するのだろう。
そして、それは『治る』のか???
脳の障害(生まれ持った性格、志向、性癖)はそう簡単に治らないと思うのだが・・・

小池氏が危惧しているように、この加害者の性根が変わっていないとしたら、彼はまた殺人を犯すかもしれない。
ならば、未来の犠牲者を出さないための有効な手段は、ただひとつ。この人物の実名、写真公開することだ。そうすれば、周囲の者は警戒できるので、殺されずに済むだろう。

ネットで実名や写真が出まわっているが・・・もし、これが加害者を指すものであれば、未来の犠牲者を出さない有効なものとなる。たとえ「加害者への人権侵害」になるのだとしても。

要するに加害者の人権を優先するか、一般市民の命を守る権利を優先するか、だ。

『人権派』は加害者の人権を優先するのだろう。
一般市民の権利は、結局、不確実なネットの情報に頼るしかない、のかもしれない。

さて、この「絶歌」の話題で、「天国からのラブレター」を思い出した。


光市母子殺害事件の被害者側遺族、本村洋さんの本だが・・・
本村洋さんと、殺された妻の弥生さんの、かなり個人的な手紙の内容が掲載されている。

当初、この本を読んだ時、驚いた。
あまりに個人的な明け透けな内容で、弥生さんの手紙の中には実名のお友だちがたくさん登場するからだ。
おそらく、この本が出たことで、実名で話題になってしまったお友だちの中に傷ついた人もいたのでは、と・・・この件については、本村さんに嫌悪感を抱いた。

そして、妻の弥生さん、こんな形で自分の手紙を公開されて・・・気の毒に思った。
絶対にやめてほしかっただろう。

私が弥生さんの立場なら、絶対にやめてほしい。
その手紙には友だちの悪口や愚痴も書かれているのだ。
これを友だちが知ったら、なんて思うだろうか?

私は、もし個人的悪口を言う場合、絶対に外へ漏らさない「信用できる人」にしか言わない。

この本を見た時、手紙っておそろしいな、と思った。

※そういえば「ショパン物語」を描いている時、ショパンとジョルジュサンドの手紙についても思った。超有名人は手紙も公になってしまう場合があるんだなと^^;

本村さんは同情されるべき被害者側であるが・・・
こういったノン・フィクション系の本を出版することで、傷つき不快な思いをする人は出てくるものなのかもしれない。この場合、本村さんは加害者となる。
弥生さんの手紙に出てくる友人たちに「掲載してもいいか?」の許可を取るべきだったのでは、と思う。

許可をとったのか、とらなかったのか・・・おそらく、許可をとってないと推測する。(文庫本で再登場したとき、友人知人に迷惑をかけた、と書いてある)

※「絶歌」だって、事前に被害者側遺族に許可をとれば良かったのに、あえてそれをしなかった。それは「許可しないことを分かっていた」からだろう。

私が、もし「この友人」だったら、許可しない。それだけ明け透けなことが書かれている。

下ネタの類もあるし・・・

世代が違うからなのか、私なら恥ずかしくて、そんな手紙を公に晒そうとは思わない。
何しろ、友人への愚痴や悪口、マイナス面、友人にしてみればそんなこと公にしてほしくないだろうことが、けっこう書かれている・・・これら友人への気遣いは本村さんになかったのだろうか???

もちろん、文庫本後書きには(平成12年の本には、この「あとがき」はない。平成19年、文庫本になっての「あとがき」だ)・・・【妻の友人や親せきの方々には、知らなくてよいことまで知ってしまい、ご迷惑をおかけすることも危惧しておりました。実際に出版した後に、本当にご迷惑をおかけした方も多数おられますこのことについては、本当に申し訳なく思っています】と書かれている。

だが、なぜか、私は今回の「絶歌」と「天国からのラブレター」が重なった。

「絶歌」出版で、被害者遺族の傷と、「天国からのラブレター」出版で、実名で登場している友人たちの傷と、同列に較べられないが、傷ついたという点は同じではないか、と。

いや、「中原さん」や「由佳里さん」や「高原君」や、ほかいろいろ出てくる友人知人、もしかしたらそれほど傷ついていないかもしれないが・・・
私が彼らの立場だったら、傷つく。なぜ、こんなことを公にするのだ、と。

そして弥生さんにこんなふうに思われていたのか、と、不快な思いをするだろう。
被害者である弥生さんをそう思わないといけない自分にも、やりきれない思いを抱えることになる。

もちろん、平成19年の段階では、皆、いい歳になっており、『昔の思い出』として捉えることができただろうが、平成12年の段階ではどうだっただろうか?

本村さんはたしかに同情されるべき被害者側遺族だが、大いに違和感を持った。

アマゾンのレビューにもそういったことが書かれている。

つまり、この本の印象。正直言って「えげつない」
なので、本村さんと弥生さんのラブラブぶりも、ほほえましさよりも、鼻に突いてしまう。

とはいえ、弥生さん、実家から遠く離れた光市の社宅で、あの若さで、赤ちゃんを一人で育て、その点は本当にすごい女性だと思う。(ただ出産直後から4か月ほどは実家のほうでいろいろ世話してもらったみたい)

本村さんはいつも帰りが遅く、そして腎臓病がいつ再発するか分からず、実際、就職して2か月間入院したこともあり、弥生さんが赤ちゃん連れて見舞いにいったりしているのだ。

今の「イクメン」=男性の育児参加など期待できなかった時代、子どもは母親が育てるもの、子育てを辛いなどという女性は母親失格という空気が健在だった時代だ。
本村さんも安心して家庭をまかせられる女性だったのだろう。
弥生さんの育児日記などに、全く「ネガティブなところ」「愚痴」がないことに、びっくり。

今現在、育児に悩んでいる女性や、育児を辛いと思う女性は、これを読んだら、自信なくすかも。弥生さんのように生きられる女性は、それほど多くないかもしれない。

弥生さんの育児日記と言うか本村さんへの交換日記(しかし本村さんはほとんど返事していない)には、ネガティブな記述がない。いや、ほんとうはキツくて大変だったけど、本村さんが目を通すということで、そういったことはあまり書かなかったのかもしれないが。

今の日本において、弥生さんみたいな人が結婚向き(子育て向き)な女性なんだろうな、と思った。(イクメンできるのは、まだまだごくごく一部の男性だけだろう)
愛情を素直に表現できる弥生さんの子どもも生きていれば、きっと愛情深く、素直でいい性格に育ったことだろうに。

反対に、愛情を表現できない人たち=不器用な人たち(ハヤシも含む)は、甘え下手で、どちらかというと人間関係に苦労し、疎外感を味わう側にしてみれば、本村さんと弥生さんは別世界の人間で、思いを寄せるのにあまりにも遠すぎる存在だな、と思ってしまった。

というわけで、不思議なことに、この「天国からのラブレター」を再読し、「愛されなかった加害者元少年」に思いを寄せてしまった。

もちろん、当時も今も、死刑判決は正しい、と思っている。
(あのような形で何の落ち度もない2人の人間を殺害し、償いようはなく、公平性という観点から「死刑」が妥当だと思う。これは刑罰・・・つまり罰なのだ)

けれど、父親に酷い暴力を振るわれて育ち、母親も父親の暴力で心身を病み自殺、そして父親はフィリピン人と再婚し、新しい赤ちゃんが生まれ・・・
愛されず、家庭というものから疎外されて育った加害者と、本村さんと弥生さんのラブラブぶり(もちろん、二人ともそれ相応に苦労し、弥生さんは母子家庭で育ち、本村さんは病気を抱え、努力してその幸せな家庭を手に入れた)を対比すると・・・不条理を感じた。

この本を知るまでは、『本村さん、頑張れ』の一点張りだったが・・・ちょっと引いてしまった。
本というのは、けっこう影響力あるな、と思った。

本村さんと弥生さんは今の世間が良しとする価値観にぴったり合った二人だ。大恋愛をし、若くして結婚し、子どもを作り、幸せな家庭を築く生き方。弥生さんは愛を表現しながら子どもを育てていただろう。理想の家族になったことだろうに。
犯罪に合わなければ、世間で言うところの「勝ち組」家族だ。(本村さんは新日鉄という在企業にお勤めだ)

ただ、その理想に全く近づけない人もたくさん存在するのでは、とも思った。
そういう人から見たら、本村さんと弥生さんは別世界の人間、人種が違う、遠い存在である。

そうそう、こんな意見を目にした。

もしも本村さんと弥生さんの容姿が、普通以下だったら・・・これほど世間の同情を集め、司法を変えるところ
まで世間を動かせただろうか、と。
もしも容姿が悪かったら、メディアもここまで取り上げなかったかも、と。

なんか、そんな意見に頷くところもあり、世間の本音を思うのであった。

・・・・・・
余談

話はちょっと違うかもしれないけど・・・
甘えベタで人と距離を置き、コンプレックスを抱え、世間でもおすすめの恋愛も苦手で、やがて世間から見下されるのだろう人たちに思いを寄せた。

あまり愛情表現されるような家庭で育たなかった場合・・・は、そういう子に育ってしまうかも?

けど、母親にしてみれば、育児にいっぱいいっぱいで、中には子どもにキツク当たったり、虐待めいたことをついしてしまったり、子どもに暴言吐いたり・・・そんな母親、あるいは父親も多いと思う。それほど育児は大変だ。

もちろん、本人の性格もあるだろうし、愛情表現がないから愛情がないとは言えないのだけど。

両親が厳しく、キリキリした中で育た子どもは、たぶん甘え慣れてない、甘えたいけどどうしたらいいか分からないので、一歩引いてしまい、自分も愛情表現が苦手で、人に壁を作ってしまうのだろう、と。
おそらく甘えても受け入れてもらえない、と。なにしろ、親に受け入れてもらえてないのだから、他人が受け入れてくれるはずがないと思ってしまう。

で、何かと「ごめんなさい」と口にする。遠慮することが多い。
そういう子はなかなか人に心を開けないのだ。よって自信もない。

彼氏彼女どころか友人も少なく、いじめられっこである場合が比較的多い気がする。そして世間の一般人からもバカにされがちかも?(学生時代の私がそうだ)
でもそういう人、意外と多いのでは、と思う。

けど、弥生さんはとても素直で甘えるところは甘える。本村さんもそれにちゃんと応える。
世間でいうところの「理想の恋人同士」に見える(本を読む限り)
愛情いっぱいの中で育ったという感じだ。
弥生さんのところは母子家庭で生活保護を受けていたというので、決して恵まれていたわけではない。けど愛情には恵まれていたのかもしれない。

一方、犯人は・・・と考えてしまった。


また、他人を傷つける可能性がある出版の世界に、いろいろ考えさせられた。

人を傷つけてまで、それを出版したかったのか? 
(あとがきで、本村さんは「迷惑をかける可能性がある」と自覚していた)

いや、したかったんだろう。
人を傷つけてでも。
「絶歌」「天国からのラブレター」に、そんな共通点を感じた。

・・・・・・
では、私もほぼ同感・・・「天国からのラブレター」の他の人の感想

アマゾンより一部転載。

【ラブレターの中での、他人への侮蔑や非難。本村さんの思い。彼らの性格についてはさておき、本の中に登場する周囲の人々・本を読む人への気遣いがありません。
感情的になるあまり、配慮に欠けてしまったのかもしれません。
若さゆえの言動であったかもしれません。
しかし、それを本として形にする以上、気づかないうちに、彼らに関った人々やこの本を読む犯罪被害者に対して、彼らが「加害者」になってしまう危険性があります。
それを彼らが被害者であるからといって、私は「仕方ないよね」と流してしまえないものを感じました。

彼らにとってこの本は、本当にプラスになったのだろうか?
私個人にとっては、なんとも、後味の悪い1冊の本であり、本村さん家族に対する気持ちが少なからず、変化してしまった本でした。】

【一部の方がおっしゃるように金儲けの為とまでは思わないが、著者は稀に見る自己中心的で常識に欠ける人間だと思った】

【犯罪被害者としての彼の心情については、経験した事が無い私には計り知れず、慰めの言葉も見付からない。
しかし、彼がこの様な本を出版したのだから、敢えて言わせていただくと、犯罪被害者だからといって他の人よりも大きな権利を持つわけではない。
よって、手紙の公開の仕方は唖然。
人権やプライバシーという言葉を知らないのだろうか?
ネットではなぜか犯罪被害者=神聖不可侵になっているが、アマゾンのレビューは自分と同意見が多く安心した。
正直、この本の後で再婚話を聞き、妙に納得してしまった。 勿論再婚自体は自由意思で善悪を論じる事自体ナンセンスだが、この本で受けた印象と重ねると、個人的にはあまり好きになれる人物ではないと感じた。
個人的には、生まれた時から父に暴力を受け続け母は自宅で首吊り自殺という悲惨な18年の生涯を閉じる加害者と、彼に死刑を求め続けつつ新しい妻子を得て今隠せない程の喜びに満ち溢れている未来ある著者を比較すると、複雑な気分になるのは否めない。
あと、他人の彼とは比べようもないくらい悲しいはずの血族の方々の事も】

【この本はちょっと…。正直、私が同じことをされたらゾッとします。イマドキノ若者言葉でいうと、イタイ内容だと思います】

【まず、倫理上よろしくない事(未成年飲酒の数々、偽造テレホンカード使用、道交法違反検挙での暴言等等)が内容にあります。 
そして友人や親しい方への悪口や性生活に関する記述があり、非常に気分が悪くなりました】

【露骨な下ネタ(あそこの大きさがどうのとか、こんな下着を買ったなど)が満載なので実はR18ではないかと思います】

※ほかのところからの感想
【弥生さんが書いた元親友への愚痴、「あの子には赤ちゃんを見せたくなかった」とか、「彼氏を取られる方も悪いのにまだねちねち文句を言っているらしい、ムカつく」とか、そこまで載せちゃよくない気がする】

転載終わり。

nice!(1)  トラックバック(0) 

nice! 1

Facebook コメント

トラックバック 0

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。