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なぜ椰月美智子氏の「恋愛小説」に嫌悪感を感じたのか? [本・テレビ番組・ドラマ・映画・マンガ・アニメ]

オタクを気持ち悪く描写した作品は他にもあるのに、なぜ椰月美智子氏の「恋愛小説」を底意地悪く感じたのか?

それは『いじめっ子側の視点からのみ描かれたもの』だからかもしれない。

『ジェロさん』という女性について。
『オタク女子』『不潔』『気味悪い』『気持ち悪い』『おしゃれでない』、しかし性格は明るく、横暴、堂々としている、ということが・・・神視点と、主人公視点から描かれる。

この「ジェロ」というあだ名は・・・
「009」の005、またはキン肉マンに出てくる『ジェロニモ』に似ているということで、「ジェロさん」と呼ばれているが、【本人は気にしている様子もなく、そのあだ名を受け入れている】し・・・【周囲も親愛の情を持って、「ジェロさん」と呼んでいる】

・・・と神視点で、説明されている。

でも、これ、まるっきり、いじめっ子側の視点、言い訳だよね。

その『あだ名』には蔑視、嘲笑が込められているにも関わらず、「いえいえ、親しみを込めて、呼んでいたんです」「本人だって気にしていなかったし」「傷ついている様子もなかったし」「嫌がってなかったし」と・・・いじめっ子らが、自分たちのイジメを正当化するみたいに。
これは、いじめじゃないよ、と。

けど、侮蔑や嘲笑を込められたあだ名で呼ばれることを、まるで気にしないでいられる年頃の女性など皆無ではないか、と思う。女子だけではなく、男子もだ。
それでも「嫌だ」と言えず、笑って受け入れてしまういじめられっ子は多いだろうな、と思う。

ジェロさんが傷ついている描写は一切ない。
もし、傷つき、陰で泣いている描写があれば、私は「恋愛小説」に嫌悪感を抱かなかっただろう。

が、ジェロさんが傷つく描写を入れてしまうと、主人公および周囲の者が『悪者』になってしまう。だから、そんな描写を入れなかった=ジェロさんは傷ついていないし、気にしていないとしたかった・・・完全に「いじめっ子側の論理」に立つ。
だから、この「恋愛小説」にぞっとしたのかもしれない。

『気持ち悪いとされているジェロさん』と、昔、一度だけセックスをしてしまった主人公の彼氏サスケ。
そのサスケを、執拗に責め立てる美人主人公・美緒。
サスケがジェロさんとセックスしたのは、主人公・美緒とつきあう前の話だ。
で、サスケはほかにも、いろんな女の子とセックスしている。

なのに、主人公・美緒は『彼氏が、気持ち悪いジェロさんとセックスしたこと』が許せない。
そのセックスシーンを想像する・・・おえっ、と吐き気がこみ上げてくる。

そのうち「ジェロさん」を彷彿させるものすべてに吐き気を催すようになる。
例えば、少々太目な女性、ワキガの人、大きなほくろがある人、漫画の同人誌、髪がぼさぼさの人などなど。

※「髪がぼさぼさ」・・・ジェロさんは、おそらく今現在の篠原涼子のような髪型だと思われる。篠原涼子なら素敵だが、ブスはダメらしい。単に髪がぼさぼさ、不潔、となるようだ。

サスケに主人公・美緒はこう言う。
「あの人=ジェロさんを触った手で、わたしに触ってほしくない」
「消毒液に全身浸かって、身体中を清めたい」
「サスケにこそ、消毒液に浸かってほしい」

と、ジェロさんを【ばい菌扱い】する。

おえっ・・・

学校などでは、そういった子をばい菌扱いし、その子の前で吐く真似をしたり、そういう虐めってあるよなあ・・・

もちろん、主人公はジェロさんの前では、そんなことしないが、とにかくジェロさんが気持ち悪くて仕方ない、そんな描写が何度かある。

そして主人公・美緒は、今もなおジェロさんと職場で会ってしまうサスケが許せなくなり、サスケに職を替えるよう迫り、サスケは仕方なく言うことを聞く。

まさに「あの子と一切関わるな」「あの子から離れろ」「無視しろ」「あいさつするな」という『イジメ』と一緒。
ただ、この場合、サスケと美緒だけの個人的なことだから、「いじめ」にはならないだろうけど、本質は同じ。

そんな主人公・美緒が、それほど「嫌な女」に見えないのは、ジェロさんが傷ついている様子が一切描かれないからだ。
で、恋愛という特殊な感情がそうさせたのだ、としているからだろう。

その上、主人公視点のみならず神視点(客観的な視点)でも、ジェロさんに対し、とことん侮蔑と嘲笑が込められ、ジェロさんがいかに気持ち悪いかが、表現される。

まるで小説全体でもって、あるキャラクター(おしゃれに無関心で流行に無頓着な我が道を行く不細工なオタク女子)を侮蔑し嘲笑し、容赦なくイジメまくっている気がした。

小説からは、こんな声が聞こえてくる。
【いじめられている側が、気持ち悪いんだから、仕方ないんだよ。いじめられる方が悪いんだよ】と。
【というか、そもそも、いじめてないよ、だって本人も傷ついてないじゃん】と。

なので、この「恋愛小説」に、ことさら嫌な感じを受けたのだろう。
そして作者・椰月美智子氏が、数々の児童文学賞を受賞している作家で、学校を舞台にイジメを描いた作品も真面目に描いている作家さんであることも一因かもしれない。


ちなみに「恋愛小説」で、もう一人登場する不細工女子も、なぜか自信家で、やがて男性を誘いまくり、「やりまん」になっていき、陰で男性らからバカにされる。
しかし不細工女子は「条件のいい男との結婚を夢見ている」ということで・・・これも作者からの嘲笑と蔑視をヒシヒシと感じる^^;

そして作者・椰月美智子氏は美人だ。エッセイからは、ちゃきちゃきした、はっきり物事を言う印象を持った。高嶋ちさこを思わせた。高嶋ちさこもブスが嫌いだとテレビで公言したことあったっけ^^;

なので、椰月さんもブスが嫌いなのかも・・・おしゃれでない、ちょっと太めの不細工オタク女子に限っては、もう大っ嫌いなのかもなあ。
いや、好き嫌いは仕方ないんだけれど。

まあ、とにかく、いじめられっこは、傷ついていないふりをして、実は傷ついているし、周囲から蔑視や嘲笑を受けて、それに気づかない=鈍感でいられる人は少ないし、自信を持っている人も皆無だろう。劣等感に苛まれ、場合によっては自殺願望を持つこともある。

なので、傷ついている様子を描写せず、なぜか自信家に描かれる不細工キャラを徹底的に貶めたこの作品に、いじめ的な臭いを感じてしまったのかもしれない。

世間には、まだまだ「気持ち悪いオタクや不細工はいじめていい」「いじめられるほうが悪い」「いじめられて当然」「馬鹿にされて当然」という空気が残っている気がする。そして学校では最下層に位置づけされているのだろうな。

いや、ワシもキモオタなので世間様が怖いw。

・・・近寄るな、あっち行け、ばい菌、死ね、気持ち悪い、目障り、えんがちょ・・・

こんなふうに嫌われていることを、自覚しないといけませんね。
オタクに触れたら、消毒液で清めないと。何しろ「ばい菌」ですから。

生きていてごめんなさい。
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・・・・・・・・・・
追記。

邪推かもしれないけど・・・やっぱ椰月さん、オタク女子が嫌いみたいな気が・・・
だって短編集「未来の手紙」の中の「忘れない夏」でも、スポーツ少年の中学生の弟と、オタクの高校生の姉が出てくるんだけど・・・何気にオタクの姉が意地悪い。

この話は、弟視点で語られる。
引越しすることになって、学校の友達と別れることになり・・・それを嫌がる弟に、「あんたのことなんか、みんな(友だち)、すぐに忘れる」とバカにしたように笑う性格の悪いオタクの姉が登場する。

で、そんな姉に弟も
【あいつ(姉)はオレ(弟)に嫉妬してるんだ。オレとは正反対の影のうすい姉貴。中学のときなんて不登校で、ひきこもり寸前だった】
【コミケだとかアニメ同人誌とか言って、はっきり言って、気持ち悪い】
と思う。

で、仲直りする場面もない^^;

ま、弟とお友達のお話なので、オタク姉のことはどうでもいいのかもしれないが・・・オタク姉の【弟が大切に思っている友だちは、弟のことなど、すぐに忘れる】という言葉が肝になっているわけで・・・何気にオタク姉の性格の悪さが、鼻につくような物語になっている。

というわけで「恋愛小説」に出てくるジェロさん=オタク女子も横暴で性格がいいとは言えず・・・外見も性格も、ろくな描かれ方がされてない。

オタク女子=内面も残念・・・という描き方をした作品が2つ。オタク女子に同情できるような表現は全くなし。(フォローなし)
椰月さんの作品、すべて知っているわけじゃないので、何とも言えないが・・・やっぱオタク女子が嫌いなんだろうな、と思ってしまった。いや、ほかのキャラと較べて、オタク女子に厳しいな、と。
そして、どちらにも「気持ち悪い」という言葉が躍る。

オタクの一人として、生きていてごめんなさい。


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